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あかね台EMタイムス 第49号|ω3系脂肪酸は認知機能にどう働くのか

「あかね台EMタイムス」第49号は、2026年4月1日に発行しました。

今回のテーマは、認知機能とω3系脂肪酸、とくにEPAとDHAの関係です。

ω3系脂肪酸は、「脳に良い」「血管に良い」といわれる一方で、「効果を示さなかった研究もある」と指摘されています。

そのため、「結局、効くのか、効かないのか」という二択で語られがちです。しかし、この二択だけでは、ω3系脂肪酸が身体の中で果たしている役割を十分に捉えることはできません。


認知機能は一つではない

私たちが「認知機能」と呼んでいるものには、さまざまな働きが含まれています。

注意力、情報処理速度、言語、記憶、空間を認識する力、判断力などは、それぞれ異なる性質を持っています。

2025年に発表された、成人を対象とする無作為化比較試験のシステマティックレビューとメタ解析では、ω3系脂肪酸の摂取によって、注意力、知覚処理速度、言語、一次記憶、視空間機能、全般的認知機能などに一定の改善が示されました。

ただし、効果の大きさや確実性は領域によって異なり、研究結果にはばらつきがあります。ω3系脂肪酸によって認知症を予防できる、あるいは失われた認知機能を回復できると断定できる段階ではありません。


「知能を高める」のではなく、働きやすい状態を整える

この結果を診療の視点から考えると、ω3系脂肪酸は知識や知能を直接増やすというより、脳が働きやすい状態を支えるものと捉えることができます。

注意力や情報処理速度などは、睡眠不足、疲労、ストレス、炎症、血流の低下などによって影響を受けやすい機能です。

こうした身体の条件が整えば、脳が本来持っている機能を発揮しやすくなる可能性があります。

つまり、ω3系脂肪酸を「認知症を治す特効薬」と考えるのではなく、脳のコンディションを支える材料の一つとして捉えることが大切です。


EPAとDHAは同じではない

ω3系脂肪酸には、植物に含まれるα-リノレン酸のほか、魚に多く含まれるEPAやDHAがあります。

EPAには、炎症反応、血小板の働き、血流などへ影響する作用があります。一方、DHAは脳や網膜などの細胞膜を構成する重要な脂肪酸です。

それぞれに異なる役割があり、「ω3系脂肪酸」と一括りにして考えるだけでは不十分です。

今回の研究結果だけから、「認知機能の改善はEPAによるもの」と断定することはできません。しかし、注意力や情報処理速度などの変化を考えるうえで、EPAが炎症や循環へ及ぼす作用は、注目すべき要素の一つだと私は考えています。


脂肪酸は単なるカロリーではない

脂肪酸は、エネルギー源であるだけではありません。

細胞膜の材料となり、細胞が外からの情報へどのように反応するか、炎症や血栓に関係する物質をどのようにつくるかにも関わっています。

同じカロリーを摂取していても、どのような脂肪酸を多く摂っているかによって、身体の反応は変わります。

現代の食生活では、加工食品や植物油などからω6系脂肪酸を多く摂る一方、魚に含まれるω3系脂肪酸が不足しやすい傾向があります。

一つの成分だけを大量に摂るのではなく、食生活全体の中で脂肪酸のバランスを考える必要があります。


DHAだけを多く摂ればよいのか

体内では、α-リノレン酸からEPA、DPA、DHAへと変換される経路があります。ただし、その変換率は限られており、すべてのDHAがEPAから十分につくられるわけではありません。

EPAとDHAのどちらか一方だけを「良い脂肪酸」と決めるのではなく、それぞれの働きと摂取量、食事全体のバランスを考えることが大切です。

また、サプリメントは製品によってEPAとDHAの含有量、原料、酸化対策、品質管理が異なります。

多量に摂取すれば効果が高まるとは限りません。抗凝固薬や抗血小板薬を使用している方などは、医師へ相談したうえで利用してください。


「効くか」ではなく「何を整えるのか」

ω3系脂肪酸について考えるときに大切なのは、単純に「効くか、効かないか」と問うことではありません。

どの脂肪酸が、どのような身体の状態へ働き、どの機能を支える可能性があるのか。その人の食生活や炎症、血流、服用している薬なども含めて考える必要があります。

ω3系脂肪酸は認知症を治す万能薬ではありません。しかし、脳と血管が働きやすい身体の状態を整えるための、大切な材料の一つです。


認知機能に関する研究を入り口に、EPAとDHAの役割や、脂肪酸を単なるカロリーとして考えない大切さをお伝えした第49号です。

次号では、EPAと血流、動脈硬化との関係を取り上げます。


発行日:2026年4月1日発行:あかね台眼科脳神経外科クリニック

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