あかね台EMタイムス 第51号|血圧は低ければ低いほどよいのか
- Masaki Sugimoto
- 8月9日
- 読了時間: 3分
「あかね台EMタイムス」第51号は、2026年8月1日に発行しました。
今回は、急性脳梗塞後の血圧管理と正常眼圧緑内障を、「灌流圧」という共通の視点から考えます。
血栓回収後の血圧を一律に決めない
急性脳梗塞に対して血栓回収療法を行った後は、血圧をどこまで下げるべきかが重要な問題になります。
2026年に発表されたHOPE試験では、血流がどの程度回復したかに応じて、治療後の目標血圧を変える方法が検討されました。
十分な再灌流が得られた患者さんでは収縮期血圧を100~140mmHg、不完全な再灌流にとどまった患者さんでは140~160mmHgに管理し、一律に180mmHg未満とした群と比較しました。
その結果、90日後に自立した生活を送れる患者さんの割合が高く、画像上の出血性変化も少なくなりました。
一つの研究だけで、すべての患者さんの治療方針が決まるわけではありません。しかし、血圧を一律に下げるのではなく、脳の血流回復に合わせて調整する重要性を示す結果です。
守るべきものは数値ではなく臓器
私たちは、血圧、血糖、コレステロール、眼圧などの数値を下げること自体を、治療の目的にしてしまうことがあります。
もちろん、高すぎる数値を適切に管理することは重要です。しかし、本当に守るべきものは、数字ではなく、その先にある脳、心臓、腎臓、眼などの臓器です。
脳神経外科には、「脳灌流圧」という重要な考え方があります。
脳灌流圧は、概念的には「平均血圧-頭蓋内圧」で表されます。脳へ血液を届けるためには、一定の圧力が必要です。
血圧が高すぎれば、出血や浮腫の危険が高まります。しかし、下げすぎれば、脳へ十分な血液が届かなくなる可能性があります。
脳が必要としているのは、単なる低血圧ではなく、適切な灌流です。
正常眼圧でも緑内障が進む理由
日本人には、眼圧が正常範囲にありながら視神経が傷んでいく「正常眼圧緑内障」が多くみられます。
緑内障は複数の要因が関係する病気ですが、その一つとして注目されるのが「眼灌流圧」です。
眼灌流圧は、網膜や視神経へ血液を届けるための圧力で、全身の血圧と眼圧の両方から影響を受けます。
眼圧が正常であっても、血圧が下がりすぎれば、視神経へ血液や酸素が届きにくくなる可能性があります。
とくに睡眠中は自然に血圧が低下します。降圧薬の作用などが重なり、夜間の血圧が必要以上に低くなっていないかを考えることも大切です。
眼圧だけ、血圧だけを見ない
眼圧を下げることは、正常眼圧緑内障を含めた緑内障治療の基本です。
しかし、眼圧の数値だけでなく、全身の血圧、夜間の血圧低下、睡眠時無呼吸、血流の状態なども含めて患者さん全体を見る必要があります。
これは、血圧を高く保てばよいという意味ではありません。また、降圧薬を自己判断で減らしたり、中止したりすることも危険です。
血圧を下げすぎている可能性がある場合には、家庭血圧や24時間血圧測定なども参考にしながら、内科と眼科が連携して、薬の種類や服用時間を検討する必要があります。
目指すべきなのは、「正常値」へ機械的に合わせることではありません。
脳や眼へ必要な血液を届けながら、出血や血管障害も防ぐ、その人にとって適切な血圧を考えることです。
数値だけを治療するのではなく、その数値によって守られるべき臓器と血流を見る。「灌流圧」という視点の大切さをお伝えした第51号です。
発行日:2026年8月1日発行:あかね台眼科脳神経外科クリニック


コメント